Rohan Khanna+44 (0) 20 7773 0533rohan.khanna1@barclays.comBarclays, UKMax Kitson+44 (0) 20 3134 1456max.kitson@barclays.comBarclays, UKPratham Hukmat Kingar+91 (0) 22 6175 2018prathamhukmat.kingar@barclays.comBarclays, UK(日本でのコンタクト先)江原斐夫+ 81 3 4530 1379ayao.ehara@barclays.comBSJL, Japanwww.barclays.com 2今後を展望すると、市場は短期的には、米国の財政政策に引き続き注目するとみられ、特に上院でのトランプ減税法案の行方が焦点となっている。経済指標について言えば、27日(火)にフランスのインフレ率速報値が、29日(金)にドイツ、イタリア、スペインのインフレ率速報値および米国のPCEデフレーターが発表される。国債の発行について言えば、28日(水)の40年物JGBの入札が特に投資家の注目を集めるだろう。欧州では、イタリア、オランダ、ドイツが国債の入札を行う。加えて、イタリアは個人向け物価連動国債(BTP Italia)も発行する。米国では、2年物、5年物、7年物国債の入札が予定される。ソブリン格付けに関しては、5月23日に予定されるムーディーズによるイタリアの格付け見直しに注目が集まる(同国のBaa3の格付けに対して「ポジティブ」の見通しが付与される可能性がある)。クジラ、鍵穴、ユーロ圏金利カーブオランダでは、これまで主に確定給付型だった年金基金を確定拠出型に移行する制度改革が勧められている。基金の規模が巨大(総資産約1.9兆ユーロ、オランダのGDPの約170%相当)であるため、この改革は過去数年にわたり市場の注目を集めてきた。一部の小規模基金は今年に入ってすでに新制度への移行を完了しており、運用資産規模の大きい主要年金基金は、2026年1月または2027年1月の移行を計画している。このような状況において、この構造改革に対する市場の注目は、すでにユーロ圏の長期金利に重くのしかかっており、さらに米国の財政懸念やJGBの動揺が、イールドカーブのスティープ化に拍車をかける要因となっている。以下では、この移行に関する主な質問に答えていく。オランダの年金基金の制度移行とは何のことか:これは、年金基金が厳格な規制(最低積立比率など)を順守しなければならず、あらかじめ決められた給付額を支払う確定給付(DB)型制度から、ライフサイクル投資アプローチを採用した確定拠出(DC)型制度に移行することである。これが意味するのは、投資哲学を、加入者の年齢層に適したものに調整できるということだ。例えば、まだ退職まで年数があり、今後何年間も拠出金を支払うことができる若い加入者層については、年金基金がより高いリスクを取る可能性がある。一方、高齢の加入者については、投資のリスクプロファイルは自然に低くなる。この移行後、ユーロ圏のDC型年金基金制度の割合は約17%から77%に高まるとECBは試算している。全体として、新制度では、安全資産(債券)への投資の必要性が減り、株式、社債、さらには非公開資産などリスクの高い資産への配分を増やす余地が広がると考えられる。 3この1週間に移行が物議を醸したのはなぜか:新社会契約党(NSC)は、2023年に採択されたオランダ年金法の改正を訴えていた。この改正案は、個々の加入者にDC制度への移行に同意する権利を付与するものだった。これが可決されていれば、移行プロセスに大幅な遅延が生じ、既に移行プロセスに踏み切った年金基金には高いコストと不確実性が伴う状況になっていたと考えられる。先日の採決で改正案は可決されなかった(ただし、極めて僅差だった)ため、移行プロセスは予定通り進められることになった。ただし、この改正案は否決されたものの、移行期限を1年間延長し、2028年1月1日にする法案が可決された。検討されている時間軸はどうなっているか:オランダの年金基金のうち合計運用資産(AUM)の約76%を占めるものは、今後2年間で移行する計画だ。2つの重要な日付は2026年1月1日と2027年1月1日で、大規模な基金の多くがいずれかの日に新制度への移行を予定している。市場参加者は主に上位5つの基金(合計AUMの約52%を占める)に焦点を当てており、そのうち3つ(PFZW、PMT、BpfBouw)が2026年1月1日に移行を計画している。最大の年金基金であるABPは、2027年1月1日に移行する予定。一部の小規模な基金は年央の移行を計画しており、例えば、公共図書館職員年金基金(AUM:2.6億ユーロ)は2025年7月1日の移行を目指している。しかし、運営コストや手続きの複雑さが原因で、多くの年金基金は何度も目標移行日の先送りを余儀なくされている。規制当局であるオランダ中銀(DNB)は、各年金基金の移行計画の中身(DC制度下でのポートフォリオ構成を含む)とその実行方法を評価、承認する必要があり、この承認のペースが障害となっている。DNBは最近の発表で、2026年と2027年にピークを迎える移行申請に対応するため、処理能力を拡大したと表明した。しかし、迅速な承認のためには申請書類の内容が十分に整っている必要があるとの但し書きを付け加えている。したがって、現在予定されている時間軸は確固たるものではない。 Barclays |海外投資戦略スナップショット2025年5月26日図表4オランダの主要年金基金は2026年と2027年に制度を移行する予定出所:PensioenPro、DNB、バークレイズ・リサーチ年金の積立比率とヘッジ比率はどうなっているのか:積立比率(退職給付債務に対する総資産の比率)は、オランダの年金基金の重要な規制指標である。この比率は、マイナス金利と量的緩和の時代には100%に近づいていた(あるいはそれを下回ることもあった)が、政策の正常化により利回りが全面的に上昇したことで、全体として大幅に改善している。実際、図表5が示すように、同比率が105%未満の基金の数は過去5年間で大幅に減少している。直近(2024年10-12月期)のデータによると、オランダの年金基金全体の積立比率は116.2%となっている。上位10基金を見ると、2024年10-12月期の積立比率は100%を大きく上回っているが、基金間でかなりのばらつきがある。また、積立比率は2024年を通じて低下したようだ。規制当局による2025年1-3月期の業種別公式データは6月12日に発表される予定だが、5大基金の平均積立比率は、金利の上昇とイールドカーブの急激なスティープ化(長期ゾーンが主導)により、2024年第10-12月期の113.7%から2025年1-3月期には117.3%に上昇したと推定される1。最大の年金基金であるABPは1-3月期のアップデートで、株価下落により資産が減少したにもかかわらず、金利上昇のおかげで積立比率が昨年10-12月期の113.1%から113.8%に上昇したと報告している。1Dutch funds see funding ratios rise in Q1 despite negative returns, IPE図表6運用資産1~10位のオランダ年金基金の積立比率の推移出所:DNB、バークレイズ・リサーチ毎年の運用資産総額の変化(10億ユーロ)運用資産1~10位のオランダ年金基金の積立比率 4図表7運用資産1~10位のオランダ年金基金のヘッジ比率の推移出所:DNB、バークレイズ・リサーチ運用資産1~10位のオランダ年金基金のヘッジ比率 5さらに、関税の混乱に伴う4月のリスク資産の価格下落は、ヘッジ比率の低いファンドを中心に、積立比率に悪影響を及ぼしたと思われる。しかし、それ以降の反発とイールドカーブのスティープ化により、積立比率は同様に改善したと考えられる2。当然のことながら、移行期限が迫っていることから、年金基金は、特に積立比率が低下している場合には、その変動に非常に敏感になる可能性が高い。新制度では積立比率が無関係になるのに、なぜ今それが重要なのか:オランダの年金基金は移行計画の中で、加入者との団体合意手続きを通じて「目標当初積立(カバレッジ)比率」を設定している。この比率は、制度移行に際して一部の既存資産を法的要件に沿って配分する必要があることを踏まえて決定される。具体的には、MVEV/ROKプール(最低所要自己資本/運営準備金)のほか、連帯準備金、移行補償金、物価連動調整未払金などがそれに該当する。連帯準備金は将来の財務ショックに備えるためのものである。移行補償金は平均掛金制度の廃止により影響を受ける加入者への措置を反映しており、物価連動調整未払金は、過去に年金額がインフレ連動で調整されなかった年の遡及的な補填に相当する。最終的に、予想される年金支払額に対する正味調整額が計算される。図表8は、上位5基金の移行計画で言及されている目標当初カバレッジ比率と、2024年10-12月期の積立比率との比較を示している。移行時に目標当初カバレッジ比率をどれだけ上回っているかによって、法律で義務付けられているもの(MVEV/ROK)以外の項目に割り当てることができる資産の割合が変わってくる。図表9は、ABPが移行計画で提示したシナリオ分析において、当初カバレッジ比率の水準(目標比率は110%)ごとに連帯準備金等に配分される資産の割合を示している。例えば、同基金が110%で移行に成功した場合、年金支給額は0.25%増加すると予想される(表の最後の欄を参照)。シナリオ分析が示すように、積立比率がこの目標水準を上回るほど、連帯準備金(将来の損失を補うための準備金)に充てることができる資産の割合が大きくなり、年金支給額の引き上げも可能になる。同様に、積立比率が低いほど、連帯準備金に充てられる資産の割合は低くなり、カバレッジ比率100%未満のシナリオでは、移行時に年金支給額の引き下げが必要になる場合もある。移行プロセスにおいて積立比率の推移(およびその維持)が極めて重要な要素なのは、そのためである。オランダ年金基金は、どのように、そして、いつヘッジを調整するのか?この問いの最初の部分については、メカニズムはまずまずの程度分かっている。しかし、2番目の部分(「いつ」)は、実際のところ市場とユーロ圏カーブの見通しにとって、1.9兆ユーロに関わる問題である。2Dutch funding ratios rebound after tariffs delay,IPE, 2 May 2025目標カバレッジ比率と2024年1-3月期実績の比較図表9様々な当初カバレッジ比率に基づくABPの資産分配計画カバレッジ比率MVEV/ROK連帯準備金移行補償金物価連動調整未払金給付金調整90%1.50%0%0%0%-11.50%101.50%1.50%0%0%0%0%105%1.50%1.17%2.33%0%0%110%1.50%4.50%3%0.75%0.25%115%1.50%6.50%3%2%2%125%1.50%10%3%3%7.50%注:カッコはDC制度への移行が予定される年。出所:各年金基金の移行計画、DNB、バークレイズ・リサーチ出所:ABP、バークレイズ・リサーチカバレッジ比率(2024年10-12月期) 6前述したように、新制度の下では、よりリスクの高い資産配分にシフトし、最終的にヘッジの必要性は低下しよう。例えば、オランダ中央銀行(DNB)の年金基金(運用資産額は24億ユーロ)は現在、ポートフォリオの63%を債券、37%を株式に投資しているが、新制度では、配分は逆転し、一部は私募債市場にも振り向けるとしている。また、同基金は、金利リスクをヘッジするための債