OECDが国際租税紛争の防止・解決に関する最新成果を公表、目覚ましい成果を上げた中国

（中国税務速報） 第11回2025年11月 OECDが国際租税紛争の防止・解決に関する最新成果を公表、目覚ましい成果を上げた中国 概要： 経済協力開発機構（以下「OECD」）税務長官会議（以下「FTA」）は、2025年10月31日に第7回「税の確実性デー（Tax Certainty Day）」年次イベント（以下「本イベント」）を開催した。本イベントでは、世界各国の税務部門及び産業界、学界の代表者が集まり、関連統計データを公布し、租税紛争の防止・解決メカニズムについて議論し、税源浸食と利益移転（BEPS）プロジェクトにおける税の確実性への取り組みを推進した。本イベントとその成果は、国際租税紛争の防止・解決メカニズムの最新動向を示し、各管轄地域の税務機関と税務担当者に有益な知見とガイドラインを提供した。中国本土の移転価格関連の相互協議（MAP）事案の処理完了率は世界平均を上回り、事前確認（APA）の処理完了率と租税紛争の防止率はいずれも世界トップ10にランクインした。 税の確実性デーは、税源浸食と利益移転（BEPS）行動計画14の最低基準とG20/OECD税の確実性アジェンダの一部であるとともに、OECD税務長官会議の重要な年次イベントとして、世界的な税の確実性アジェンダの実施効果を評価し、租税紛争の防止・解決の改善に向けた効果的な道筋を模索することにより、国際租税ルールの透明性と公平性を推進することを目的としている。2025年10月31日、OECD主催のもと、第7回「税の確実性デー（Tax Certainty Day）」イベントが順調に開催され、世界各国の税務部門及び産業界、学界の代表者が参加し、同時に公布されたMAPとAPAの関連統計データは世界141の管轄地域をカバーしている。 2025年度の本イベントでは、下記の議題を含む一連のパネルディスカッションが行われた。 •2024年のMAPとAPAの最新統計データの公布、及び関連する年次アワードの授与•国間相互協議と事前確認制度の実施状況 •簡素化措置―企業の税務申告におけるコンプライアンス負担を軽減するための税務報告簡素化のコアな方向性の明確化•確実性向上に向けた効果的な措置―国際的コンプライアンス確認プログラム（ICAP）など•租税徴収管理能力の向上が必要な国―新規加入した管轄地域の能力構築問題 コアな洞察—————————————————————————————————————— パネルディスカッションでは多岐にわたる議題が取り上げられ、このうち、コアなテーマは下記のとおりである。 •大きな進展：OECD、各管轄地域の税務部門及び企業の代表者は、過去10年間において国間相互協議が大きく進展したと認識し、強調した。この所見は相互協議の統計データによって裏付けられる。 •重要業績評価指標（KPIs）：各関係者は、MAPとAPAの関連統計データがKPIsとして重要であると強調した。これらの指標は、現段階の実務で直面する課題を特定できるだけでなく、主管税務当局による追加リソースの申請もサポートしている。•個別の措置ではなく協力文化の重視：各関係者は、税の確実性を向上させ、紛争を防止する鍵は、各管轄地域の税務部門が対立的ではなく協力的な姿勢を取ることにあると認識している。この理念は、一部の管轄地域の税務部門にとって特に重要である。•多国間相互協議と事前確認制度：FTA MAPフォーラムでは、各管轄地域の国内手続きと法体系における障壁を取り除き、多国間相互協議と事前確認制度の発展を推進する方法を積極的に模索している。•OECDベストプラクティス：各管轄地域の税務部門はOECD公布のベストプラクティスに関するガイドライン（APAやMAPに関するガイドラインなど）を非常に重視し、一部の管轄地域では既に国内法規定に取り入れている。•非移転価格分野におけるAPAの模索：一部の管轄地域の税務部門（主にドイツとシンガポール）は、APAに類似する手続きを非移転価格分野に適用することを模索している。APAに類似する手続きが非移転価格分野に適切に適用され、関連する管轄地域間の合意を形成できるかどうかについては、今後の動向が注目される。 従来のコアな内容として、OECDは2024年のMAPとAPAの最新統計データを公布した。これらの統計データは大量の情報を含み、企業が各管轄地域におけるMAPとAPA制度の全体的な有効性と効率性を評価するのに役立つだけでなく、特定の二国間関係を評価するための参考ともなる。 MAP関連統計： •既存件数：2024年の世界のMAP事案の未完了件数は2,782件から2,980件へと小幅に増加し、増加率は7.12%である。このうち、移転価格関連事案の未完了件数は3.9%増加した。中国本土の移転価格関連MAP事案の未完了件数は、2024年の処理完了率の大幅な上昇により、2024年初の51件から年末の42件へと小幅に減少した。注目すべきは、中国本土の移転価格関連MAP事案の期末未完了件数は主にイタリア（2024年に新規5件）、米国、スイス、日本、韓国などの租税条約締結国との関連事案である。中国税務機関は今後も、これらの管轄地域を含む各管轄地域の税務部門と租税紛争の解決において交流を深め、協力を強化し続けるものと予想される。 •処理完了率：2024年の世界のMAP事案の処理完了率は比較的高く、1,119件の処理を完了し、期首既存件数の40%を占めている。MAP事案の平均処理期間は27.4か月であり、このうち、移転価格関連事 案は2023年の32か月から30.9か月まで短縮された。中国本土の移転価格関連MAP事案の処理完了率は世界平均を上回り、2024年には移転価格関連事案23件の処理を完了し、期首既存件数51件の45.1%を占めている。 APA関連統計： •処理完了率：2024年の世界の平均APA処理完了率は18.1%である。中国本土は目覚ましい成果を上げ、処理完了率は24.2%であり、世界平均を大幅に上回り、統計対象となる管轄地域の中で7位にランクインした。 •租税紛争の防止率：当該比率は、APA件数と移転価格関連MAP件数との比率（年度処理完了件数と期末未完了件数の合計数に基づいて算出される）であり、各管轄地域の租税紛争の防止の程度の違いを反映している。2024年の世界平均は37.8%で、中国本土の比率は66.7%であり、世界平均を大幅に上回り、統計対象となる管轄地域の中で5位にランクインした。 備考： （1）上記のMAP関連統計における中国本土の移転価格関連MAP事案のデータは、すべて2016年1月1日以降に開始された事案に基づいている。 （2）上記のAPA関連統計におけるAPAの処理完了率は、各管轄地域が年度内に処理完了したAPA件数とその管轄地域のAPA総件数との比較を評価したものである。当該指標は、年度内に処理完了したAPA件数が（i）期首既存件数と（ii）年度内の新規開始件数の半分との合計数に占める割合に応じて算出される。このうち、（ii）年度内の新規開始件数の半分に基づいて算出することは、一部のAPA事案が年末近くに開始される可能性があり、当該年度内の処理完了を管轄地域に求めることは不合理であるため、件数の半分に基づいて算出する。 KPMGの所見—————————————————————————————————————— 今回の税の確実性デー年次イベントは、世界141の管轄地域をカバーし、世界中のほぼすべてのMAP/APA事案の関連状況を網羅しており、世界的な租税紛争の防止・解決メカニズムの最新動向を示し、各管轄地域の税務機関と納税者に有益な知見とガイドラインを提供した。 現在、各管轄地域の税務機関は、紛争の防止・解決の効率向上に着実に取り組んでいる。特に注目すべきは、中国の税務機関の移転価格関連MAP事案の処理完了率は世界平均を上回り、APAの処理完了率と租税紛争の防止率はいずれも世界トップ10にランクインしており、複数の欧米企業を含む外資系企業本社から広く高い評価を得ている。多くの「海外進出」している中国企業も、MAP又は二国間APAの申請を通じて国際的な二重課税の排除や回避を希望している。また、中国の税務機関は、多国間枠組み及び多国間協力などの模索においても常に積極的に取り組んでいる。 現在の世界的な政治・経済環境において、二国間いては多国間の税務協議を通じて租税紛争を適切に解決することの重要性が高まっている。今後、より多くの「外資誘致」企業と「海外進出」企業がAPA/MAPの申請を通じて税の確実性を確保し、クロスボーダー租税リスクを防止し、国際的な二重課税を効果的に回避・排除し、複雑かつ変化に富むクロスボーダー租税の課題にゆとりを持って対応できるようになると確信している。 より詳細な情報に関しては、OECD関連公告（2025年10月31日公布）及びOECDが同時に公布した相互協議に関する包括的な情報2025年更新版をご参照ください。 お問合せ先 華南地域 華北地域 Inanaga Shigeru稲永繁PartnerパートナーEmail:shigeru.inanaga@kpmg.com Li Lisa李輝PartnerパートナーEmail: lisa.h.li@kpmg.com Chen Vivian陳蔚PartnerパートナーEmail:vivian.w.chen@kpmg.com 華中・華東地域 Hayashida Hironori林田弘徳PartnerパートナーEmail:hironori.hayashida@kpmg.com Xu Jie徐潔PartnerパートナーEmail:jie.xu@kpmg.com Wang Zhewei王哲蔚PartnerパートナーEmail: zhewei.wang@kpmg.com Morimoto Tadashi森本雅PartnerパートナーEmail: tadashi.morimoto@kpmg.com Takahashi Hoshiyuki高橋星行 PartnerパートナーEmail: hoshiyuki.takahashi@kpmg.com Yang Sky楊佳枚PartnerパートナーEmail: sky.yang@kpmg.com kpmg.com/cn/socialmedia For more KPMG Hong Kong SAR Tax Alerts, please scan the QR code or visit our website:https://kpmg.com/cn/en/home/insights/2025/01/china-tax-alert.html For a list of KPMG China offices, please scan the QR code or vis it our website: https://kpmg.com/cn/en/home/about/office-locations.html The information contained herein is of a general nature and is not intended to address the circumstance s of any particularindividual or entity. Although we endeavour to provide accurate and timely information, there can be no guarantee that suchinformation is accurate as of the date it is received or that it will continue to be accurat