Jian Chang+852 2903 2654jian.chang@barclays.comBarclays Bank, Hong KongYingke Zhou+852 2903 2653yingke.zhou@barclays.comBarclays Bank, Hong KongYing Zhang+852 2903 2652ying.zhang3@barclays.comBarclays Bank, Hong Kong(日本でのコンタクト先)ラムスレンシャラブデムベレル+81 3 4530 1881lhamsuren.sharavdemberel@barclays.comBSJL, Japanwww.barclays.com 2劇的な関税引き下げが市場の予想を上回ったことで、中国関連資産は市場再開とともに上昇し、5月12日にはドル高の中でオフショア人民元(CNH)が上昇した。貿易協議に先駆け、トランプ大統領は対中関税を80%に引き上げる案を示唆し2、ニューヨーク・ポスト紙は、トランプ政権が145%の関税を半分以下の50~54%に引き下げる計画を検討中と報じていた3。金融市場はこの予想を上回る関税引き下げを好感し、CNHは5月12日に対ドルで7.2まで上昇、13日には年初来高値の7.18を記録した後、やや値を戻した。この動きは、ドル高(ドル指数[DXY]が5月9日の100.74から5月12日には101.79へと1%上昇)と、主要通貨の対ドルでの下落(例えば、5月9日から12日の間にユーロ/ドルは1.13から1.11に、ドル/円は145.37から148.46に下落)の中で起きた。中国本土株式市場も反発し、5月14日には「解放の日」前の高値水準まで戻した(2025年5月12日付「Global Macro; Thoughts A massive tariff reset with China」を参照)。当社のみるところ、今回の好ましい結果は、トランプ政権がスタグフレーション圧力や市場の不安感の高まり(2025年4月25日付「US Outlook:Too early to store that winterparka」および2025年5月14日付「米国:最新の経済/FOMC見通し:対中貿易戦争の緩和:巻き戻し」を参照)、さらには米企業による強力なロビー活動を踏まえ、対中緊張の緩和と中国との決定的なデカップリングの回避に前向きになったことを示している。ブルームバーグの報道によれば、今年1-3月期には約350社が関税を主な懸案事項としてホワイトハウスや議会に訴えていた。この数は前年同期の2倍以上にのぼる。こうした企業には、自動車メーカー(ゼネラル・モーターズやテスラ)、小売大手(ウォルマートやターゲット)、さらにはサプライチェーンへの懸念を表明した一部の電子機器メーカーも含まれている。米中間で報復関税の応酬が繰り返されていたにもかかわらず、トランプ政権は対中協議に前向きなシグナルを発していた。実際、中国外交部の報道官、林剣氏は「今回の協議は米国側の要請によるもの」と述べている4。協議の前に、中国側は「対話には前向きである」との姿勢を示していたが、同時に「一方的な関税引き上げ」の撤回を協議の前提条件として求めていた5。5月1日には、国営メディアCCTV系列のSNSアカウントが「米国は最近、複数のルートを通じて中国側に接触し、関税問題を巡る協議を希望している」と伝えた。翌2日には、中国商務省が、中国は貿易協議の可能性を検討しているところだとしつつ、交渉の条件として、「中国に誠意を示し、一方的関税の撤回を通じて誤った行為を正す用意をすること」を米国に対して求めた6。2"Trump says 80% China tariffs 'seems right,' ahead of talks",Bloomberg, 10 May 20253"US weighs plan to slash China tariffs to as low as 50% — down from 145% — as soon as next week: sources",NewYork Post, 8 May 20254"China says tariff talks being held at the request of the US",LBC, 7 May 20255China says it’s evaluating possible trade talks with the US,CNN, 2 May 20256"China Hints It’s Open to Trade Talks. Here’s the Latest Tariff News.",Barrons, 1 May 2025関税摩擦の緩和を受けて株式市場は上昇…図表2…人民元も上昇出所:Wind、バークレイズ・リサーチUSD/CNY(右逆目盛り)5月12日:関税引き下げ4月2日:相互関税4月2日:相互関税5月12日:関税引き下げUSD/CNH(右逆目盛り)香港ハンセン指数 2025年5月20日出所:Wind、バークレイズ・リサーチ 3当社が注目していることに、中国は初期の協議において、米国に対して大きな、あるいは多数の譲歩を行ったわけではない。例外として譲歩したのは、1)報復関税を相互に引き下げる、2)米国に対する一部の非関税障壁を停止する、3)フェンタニル関連の問題で協力するという3点である。関税の行方はなお不透明関税の見通しはなお不透明であり、90日間の猶予期間の後は特にそう言える。米中貿易関係が抱える構造的な問題を考慮すると、長期的な解決は達成が困難であり、交渉は一進一退となるだろう。短期的には、交渉結果に対するリスクは二面的だと思われる。•対立激化のシナリオ:米中が合意に至らない場合、米国は90日間の関税停止期間終了後に34%の相互関税のうちの24%を復活させるか、より高い水準に引き上げる可能性すらある。過去の事例が今後の参考になるかもしれない。貿易戦争1.0を例にとると、2018年12月のG20首脳会議でのトランプ大統領と習近平国家主席の会合後に米国は関税引き上げを一時見送り、両国は90日の交渉期間の設定で合意した。90日が過ぎた2019年5月、トランプ政権は2,000億ドル相当の中国製品に対する関税を10%から25%へ引き上げた。2018年5月にも同様の事例があり、米国は中国への関税停止を示唆していながら、1ヵ月後に関税を発動した。•緊張緩和のシナリオ:米国はフェンタニル関連の20%関税を撤廃する可能性がある。中国公安部の王小洪部長はフェンタニル問題への対応を担当しており、スイスを訪れた中国代表団(団長は何立峰副首相)の一員として貿易協議にも参加していた。この問題で進展があれば、トランプ政権が20%の関税を撤廃し、10%の基本関税のみを維持することもあり得る。当社のパルスチェックは内需に関する懸念を示唆90日間の休戦と関税引き下げで輸出の見通しは改善したが、当社の最新の経済パルスチェック(各種データおよび5月中旬に実施した北京・上海・蘇州での現地調査)は、週次不動産販売が過去1ヵ月に悪化するなかでの不動産投資の下振れリスクや、弱い労働市場と不透明な見通しを背景とする消費者センチメントの軟化を示唆している。その一方で、中央および地方の国有企業を含む国有セクターは、設備更新およびエネルギー関連投資の実施に向けた取り組みを強化している。こうした要因と、おそらくより控えめな景気刺激策を勘案して、当社は2025年成長率予測をコンセンサスを下回る+4.0%に維持する。確かに、関税交渉の結果が不透明な状況では、全てのGDP成長率予測は不確実性を伴う。それでも、最新のチャネルチェックやデータの動向を踏まえ、当社は輸出、投資、消費の3つの主要項目に関する予測および前提を調整する。•輸出:当社は純輸出のGDP成長率への寄与の見通しを0.4pp引き上げて+0.4ppとする。主な理由は、1)米国の対中関税の90日間の大幅な引き下げ、2)中国の主要貿易相手国(米国、ASEANを含む、2025年5月14日付「米国:最新の経済/FOMC見通し:対中貿易戦争の緩和:巻き戻し」および2025年5月13日付「Emerging Asia:US-China agreement: Economic forecast updates」を参照))の成長率予測の上方修正、3)出荷急増が続くなかでの3~4月の輸出の予想上振れ(2025年5月9日付「China: Still robust exports on trans-shipments」を参照)、である。加えて、当社は2025年通年の輸出の見通しを従来の0%から+4%へ引き上げた。90日間の関税停止は輸出業者による出荷前倒しを促す見込みであり、4-6月期は+6~8%の堅調な伸びが継続する一方、年後半はその反動で0%近くまで鈍化すると予想される。興味深いことに、高頻度の先行指標も、関税停止を受けて今週はコンテナ予約が急増したことを示している。コンテナ追跡ソフトウエア提供会社Vizionによると、5月14日に終わる週の中国から米国へのコンテナ予約は、5月5日に終わる週との比較で+277%増加した。また、ドイツのコンテナ輸送会社ハパックロイドによれば、今週は 4米中間の予約件数が前週比+50%増加した7。このような先行指標の大幅な改善は、4-6月期の輸出が堅調を維持することを示唆している。投資:不動産投資の予想下振れを受けて、当社は投資の成長寄与の見通しを0.5pp引き下げて+1.5ppとする。不動産投資は長期的な縮小に陥っており、2022~2024年に3年連続で10%程度減少した後で2025年1-3月期は前年比-9.9%を記録した。当社は2025年の不動産投資の見通しを従来の-6~8%から-10%へ下方修正する。これは4月以降の販売動向の悪化や、未完成物件の販売を制限する住宅市場改革の可能性を反映している8。主要100都市の不動産販売は1-3月期は一時的に安定化したが(前年比+1%)、4月は同-5%と再び減少に転じた。特に1~2級都市の販売悪化が目立ち、1級都市は1-3月期の+16%に対し4月は-2%、2級都市は1-3月期の+3%から4月は-10%と二桁のマイナスに転じた。一方、3~4級都市は4月に+2%と底堅く推移した。だが、中古住宅価格の下落は、買い手のセンチメント悪化を示唆している。不動産調査会社の中国房地産指数系統(CREIS)のデータによれば、中古住宅価格は3月の-0.6%に対し4月は-0.7%とマイナス幅が拡大した。国家統計局(NBS)のデータでも、中古住宅価格は主要70都市のうち64都市で下落し、3月の56都市から悪化した。住宅在庫も高水準にあり、4月末時点で全国平均の在庫月数は20ヵ月である。健全と見なされる在庫水準は12ヵ月であることを踏まえると、住宅需給は極めて不均衡な状況にあることが窺われる。政策面では、政府は従来の販売前契約モデルから、完成物件のみ販売を許可する新モデルへの移行を検討している。これは買い手保護の観点からは前進だが、流動性懸念の高まるデベロッパーにとっては土地購入や新規投資に対する意欲が削がれる可能性がある9。不動産以外の投資については、関税が予想以上に引き下げられたことで、政府による追加プロジェクトの必要性が低下し、今後数四半期のインフラ投資に下押し圧力がかかるだろう。その一方で、関税の不確実性が残るなか、貿易戦争の緩和と輸出見通しの改善、さらには設備更新に対する政策支援が、製造業投資を下支えすると考えられる。消費:当社は2025年の消費の成長寄与の見通しを+0.1pp引き上げて+2.6ppとする。追い風としては、1)貿易に関する政策対応(補助金など)が予想を上回ったこと、2)消費促進プログラムがサービス消費にも適用