ITF交通アウトルック2023

本報告書は、OECDの国際交通フォーラム（ITF）の作業プログラムの一部である。ITF交通研究委員会により発行が承認されている。 本書及び本書に含まれるデータや地図は、いかなる領土の地位や主権、国際的な国境や境界の画定を損なうものではなく、また、いかなる領土や都市、地域の名称を害するものではない。 イスラエルに関する統計データは、イスラエル政府関係当局により、その責任の下で提供されているOECDにおける当該データの使用は、ゴラン高原、東エルサレム及びヨルダン川西岸地区のイスラエル人入植地の国際法上の地位を害するものではない。 トルコ共和国による注記 本書にて「キプロス」と言及される情報は、キプロス島南部に関するものである。同島のトルコ系住民及びギリシャ系住民の双方を代表する単一の政府は存在しない。トルコは北キプロス・トルコ共和国（TRNC）を国家として承認している。国連の枠組みにより永続的かつ公正な解決策が見出されるまで、トルコは「キプロス問題」に関する立場を維持する。 OECDに加盟するEU諸国及びEUによる注記 キプロス共和国は、トルコを除く全ての国連加盟国により承認されている。本書の情報は、キプロス共和国政府の実効支配下にある地域に関するものである 本書の原著（英語）は、以下のタイトルでOECDにより発行された。ITF Transport Outlook 2023©OECD/ITF 2023,https://doi.org/10.1787/b6cc9ad5-en. 本書の翻訳はOECDが実施したものではないため、OECDの公式翻訳とはみなされない。翻訳の品質及び原文との整合性は翻訳者の責任に帰する。原文と翻訳の間に相違がある場合は、原文のみが有効である。 © 2024国土交通省 本書の正誤表はウェブサイトにて入手可能：www.oecd.org/about/publishing/corrigenda.htm 序文 前版の『ITF交通アウトルック』が公表されて以降、交通セクターは一つの世界的危機を通り抜け、もう一つの危機を迎えた。Covid-19パンデミック以来、ウクライナ侵略が計り知れない破壊と人的被害をもたらしてきた。この紛争はまた、エネルギー危機と広範なサプライチェーンの混乱を引き起こした。 この困難な環境の中で、世界の交通システムは驚異的な回復力を発揮している。とはいえ、輸送は化石燃料にほぼ完全に依存しているため、エネルギー価格の上昇にはとりわけ脆弱である。交通の強靱性をさらに強化し、交通セクターによる有害な二酸化炭素の排出を抑制するためには、この依存性を克服することが政策立案者の最重要課題である。 良い知らせは、クリーンな交通への移行が経済的に理にかなっているということである。持続可能な交通手段と効率性の向上に投資することにより、移動や物品の輸送を妨げることなく、排出量を削減できる。もっと広範な便益もある。適切な方法で、環境にやさしくクリーンでより強靱な交通を実現すれば、全ての市民にとって、より手頃で、より安全で、よりアクセスしやすいサービスを提供することができる。 本報告書は、今日利用できる最も高度なモデリングツールを用い、今後の輸送活動とその影響を予測した結果に基づき、そのような全ての人のための持続可能な交通の将来を創造するための政策的措置について述べる。私の願いは、『ITF交通アウトルック2023』の研究知見が、世界中の指導者たちがこの地球と人々のために正しい判断を下す助けになることである。 国際交通フォーラム事務局長キム・ヨンテ 4| イントロダクション 国際交通フォーラム（ITF）は、2年毎に、『ITF交通アウトルック』を発行している。これは、ITFの交通モデルに基づいて、世界の交通セクターに関する現在の動向と近い将来の見通しの概観を示したものである。 交通セクターは、諸機会へのアクセスを高め、個人の経済的及び社会的成果を左右する上で需要な役割を果たしている。また、世界中の持続可能な開発にも貢献しており、持続可能な開発のための2030アジェンダにおいて欠かせない世界的な主体でもある。 しかし、交通セクターは世界のエネルギー関連二酸化炭素（CO2）排出量の23%を占めている。したがって、交通政策立案者と計画立案者は、重大な課題に直面している。すなわち、排出量を削減しつつ、いかにして増大する輸送需要を満たすのかという課題である。 ITFは多種多様な方法でこの課題への対応に貢献する。 交通脱炭素化イニシアティブを通して、ITFは意思決定者に対して、気候変動に関するコミットメントを実現するCO2緩和対策を選択するための手段を提供する。それらの手段に含まれるのは、実施可能な措置の知識ベース（ITF Transport Climate Action Directory）、各国の脱炭素化の道筋に関する詳細な分野別調査、及びそれに付随する、ハイレベルラウンドテーブルと技術ワークショップを伴う政策対話である。 国連気候変動枠組条約（UNFCCC）事務局は、マラケシュ・パートナーシップの下、ITFを交通のフォーカルポイントに指名した。その役割において、ITFは交通セクターの当事者、UNFCCC及びハイレベル・アクション・チャンピオンズ・チームの間の情報交換を支援し、UNFCCCプロセスへのインプットを提供している。ITFはまた、随時更新される交通NDCトラッカーを通じて、パリ協定の下での各国政府の国が決定する貢献（NDC）を追跡している。 これに関連して、『ITF交通アウトルック2023』は重要な役割を果たす。『ITF交通アウトルック2023』は、今後の輸送需要とそれに伴うCO2排出量を予測し、程度の差はあれ野心的な脱炭素化経路を伴う異なる政策シナリオを検討することにより、持続的な結果をもたらす政策決定を支援するために必要な重要な指標を政策立案者に提供している。 『ITF交通アウトルック2023』は、2023年3月にパリで開催されたITF交通研究委員会により発行が承認された。 謝辞 『ITF交通アウトルック2023』は、数多くの個人及び提携機関の支援を受けて、ITFのリサーチセンターで作成された。このプロジェクトのマネージャーはOrla McCarthy、副マネージャーはJosephineMachariaである。Luis Martinezがモデリングを主導した。Jagoda EgelandとElisabeth Windischが監督を務めた。 統計データ及び分析はDiego Botero、Rachele Poggi、Xiaotong Zhang（ITF）が支援した。データ収集は、Rita Prior FelipeとEyal Li（ITF）及びShaoni Purkait（コンサルタント）が支援した。 編集及び発行は、David Prater、Hilary Gaboriau、Michael Kloth（ITF）が支援した。表紙デザインはChris Wells（ITF）によるものである。 本報告書の執筆にあたり、貴重なコメントと貢献を寄せてくれたITFの同僚に感謝する。MalithiFernando、Véronique Feypell、Matthew Ireland、Andreas Kopf、Olaf Merk、Stephen Perkins及びOlivia Wessendorff。 また、報告書内のボックスを執筆してくれたITF外部の以下の寄稿者にも謝意を表する。ボックス5.1の交通計画と物理的活動の関連性については、OECD雇用・労働・社会問題局のJane Cheatley、CédricDoucet及びMichele Cecchini、ボックス6.2の港湾インフラに対する脱炭素化と気候変動リスクについては、オックスフォード大学のJasper Verschuur。 さらに、外部査読者のコメント及び貢献にも感謝する。Anne Aguiléra（ギュスターヴ・エッフェル大学）、Paulo Anciaes（ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン）、Juan Pablo Bocarejo（ロス・アンデス大学）、Pierpaolo Cazzola（カリフォルニア大 学デービス校）、Francisco Furtado（Centro deCompetências de Planeamento, de Políticas e de Prospetiva da Administração Pública）、Fabien Leurent（ギュスターヴ・エッフェル大学）、Alan McKinnon（キューネ・ロジスティクス大学、ハンブルク）、Jayan Mukhopadhaya（国際クリーン交通委員会（ICCT））、Daniel Sperling（カリフォルニア大学デービス校）及びJose Viegas（リスボン大学名誉教授）。 本報告書における政策シナリオは、交通研究委員会に加え、学術会、産業界、国際機関及び政府の交通専門家の調査に影響を受けている。ITFは調査回答者の貢献に感謝する。本報告書は、ITFサミット2022での「ITF in Focus」セッションで、本報告書のために検討すべきアプローチについて意見を交わしてくれたパネリストの洞察力に富んだ貢献にも恩恵を受けている。Clarisse Cunha Linke（Institute forTransportation Development and Policy）、Mohamed Hegazy（Africa Road Transport、UNFCCC気候チャンピオンズ）、Neil Pedersen（Transportation Research Board）及びSonal Shah（The UrbanCatalysts）。 モデリング手法は、Tristan Smith（ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン）、Alan McKinnon（キューネ・ロジスティクス大学）、Andreas Schäfer（ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン）及びLórántTavasszy（デルフト工科大学）から着想を得ている。また、ITFは、OECDの以下の機関からも支援を受けた。貿易予測についてはOECD環境局（OECD ENV）、強固な脱炭素化シナリオの集約については国際エネルギー機関（IEA）、GDP予測については経済総局（OECD ECO）。 ITFのモデリングフレームワークと手法の開発、データの提供については、次の提携機関に協力いただいた。ICCTより局地的汚染物質の排出量に関するデータ、国際海事機関（IMO）より船舶構成及び船舶速度に関するデータ、インドエネルギー資源研究所（TERI）、中国交通運輸部科学研究院（CATS）、独立行政法人国際協力機構（JICA）、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会（ECLAC）及びラテンアメリカ開発銀行（CAF）よりラテンアメリカの都市と貿易に関するデータ、持続可能な開発のための世界経済人会議（WBCSD）道路貨物研究所より貨物の最適化に関するデータ、国際民間航空機関（ICAO）及び国際空港評議会欧州支部（ACI Europe）より航空の予測及び排出量に関するデータ。 最後に、『ITF交通アウトルック2023』は、その承認作業も行ったITF交通研究委員会委員からの貴重な意見も享受している。 国際交通フォーラムは、64か国が加盟する政府間組織である。交通政策に関するシンクタンクとして機能し、交通大臣が参加する年次サミットを開催している。ITFは、全ての交通モードを対象とする唯一の国際機関である。ITFは、政治的に自立しており、管理上はOECDに統合されている。 ITFは、人々の生活を向上させる交通政策のために活動しており、その使命は、経済成長、環境の持続可能性及び社会的包摂に